マンガMeeジャンル大賞 ゲスト審査員インタビュー
初めて今回の企画をお聞きになった時のご感想を教えてください。
私で大丈夫なのかな、と。
少年誌で、少年漫画しか描いたことがない、そしてお話をいただいた当時、ちょうど別件で、少女漫画の技法のすごさやそれを自在に操る少女漫画の先生方のすごさを思い知っていたところだったので、私でいいのか、今の私がお受けして良い話なのだろうかと。迷いました。
審査員を引き受けようと思われた理由はなんですか?
本賞の募集の狙いの説明をいただいた際、「従来の少女漫画誌の枠に当てはまらない」ファンタジー漫画への開拓、とあり、
あまり「少年漫画」「少女漫画」の枠に囚われず考えても良いのかなと思ったからです。
また、少女・女性漫画誌の投稿者の方々が好きなファンタジー漫画によく『約束のネバーランド』を挙げてくださると伺いました。
『約ネバ』で培った経験で『約ネバ』の白井として審査させていただいて大丈夫なら、お役に立てるかなと思いました。
新人の時に苦労した思い出はありますか?
強いて挙げるなら、投稿時、ずっと箸にも棒にも掛からず全然賞に届かなかったことでしょうか。
でもそれは自分ができていなくてのその結果だと思っていたので、特につらいとかではなかったです。
それとは別にその後、本当につらくて苦しかったことが1つだけありますが、この場では言えません。笑
言えない悩みもあったのですね笑。箸にも棒にも掛からない中、どのように打破されたのですか?
どうやったら打開できるかを考えました。賞に届かないのは何故か、何が足りていないからか。
それがつらいと苦しむより、何をどうすれば望むマウンドに立てるのか、土俵に上がれるのか、
そこを考えてできるようになった方が、自分にとって有意義だと思いました。
自分だからこそできる強みは何か、自分が面白いと感じると思うポイントは何か、それが今もし伝わりきれていないのなら、どうやれば自分の意図通り読み手に最大値で届くのか、など突き詰めたり試行錯誤を重ねたりしました。描いたものを友達に読んでもらって、どう見えたか何作も聞きまくりました。ただ、これはあくまで私に合っていた方法です。
分析など変にしない方が上達が速い人もいます。
漫画家になれて判ったことは、描く人の数だけ正解があるということです。
先人の中に正解を探さず、自分に合った方法や自分だからこその正解を見つけて進むことが一番だと思います。
白井先生は、300P超えのプロトタイプのネームを描いて持ち込んだのが『約束のネバーランド』のきっかけと伺いましたが、その企画はどうやって生まれたのでしょうか?
脱獄物が好きなので、読みたいな、と。
ですが、世の中の脱獄物は刑務所からのものが多いので、つくるならそれ以外からのものでつくれないかなと
(※刑務所からの脱獄物も大好きです)。
着想の、直接のきっかけはテレビのニュースでしたが、子供の頃に読んだ童話(『ヘンゼルとグレーテル』や『注文の多い料理店』、山姥の話など)の影響や、最終的にはその時、久しぶりに見た『幽☆遊☆白書』で、「この状況、私なら養殖するな」と思ったことなどが決め手だったと思います。
今回のジャンル(『ファンタジー』作品)を描くにあたって大成するために「新人」にとって必要な心構え、大切なことはなんだと思いますか?
一番の面白さが「設定」で終わらないこと。
『ファンタジー』というと特に新人の方は、「設定」を凝ったり、
その説明に全ての意識を注ぎ込んでしまったりすることが多いのではないかと思います。
「設定」が面白いのは確実に良いことです。凝ること自体も全く悪いことではありません。
ただし「設定」だけになったら大概自滅します。
多くの人に届くファンタジーにするためには、面白さが「設定」以上に、
その舞台で生きる「キャラクター」、その「想い」や「関係性」にこそあるべきです。
お客さんの大半は感情で漫画を読みます。感情や感性を揺さぶられたくて漫画を読みます。
難しい説明を理屈の脳でなど、大半の読者は出来得る限り読みたくありませんし、読んでもらえません。
「設定」はあくまで人物を輝かせる装置、主役はキャラクター、それが一番大切なことだと私は思います。
その設定で一番輝く子を主役にしてあげてください。
ご自身の活動において刺激やインプットをするために触れているものを教えてください。
映画、ドラマ、漫画は演出の勉強等で。
創作の刺激は、テレビのニュース、ドキュメンタリー、舞台のお芝居、博物館等が多いと思います。
ただ、これも“私の”正解なので、真似をすれば必ず何かを得られる、とかではない気がします。
『約束のネバーランド』の時(特に2年目以降)に、ファンタジー脳を活性化させるためによく見たものは、
映画や、出水先生のイラストでした。
こちらもあくまで参考までに。
ファンタジーを描く上で、意識していることやファンタジー作品を描くためのコツはありますか?
重複しますが「設定」に終始しないことです。
『約ネバ』の連載中、担当から耳タコになるほど忠言賜り、実際その通りだと体感しつづけました。
一番大切なのは「感情」で、一番要らないのが「説明」、「設定」は人物を輝かせる装置。
勿論、どうしても必要な説明は(面白さとして)決して削りませんが、あくまで描くべきは「感情」、そこだけは忘れず、
心に残る想いや台詞、絵やシーンを何よりも優先して入れる、それを最大値にして届けるつくりにする。
絶対「段取り」を追うだけの物語にはならないように。
とはいえ、これも“私の”正解なので、ひょっとしたら、「設定」に終始しても人に届く面白い物語は描けるかもしれません
(並大抵でなく、めちゃくちゃ難しいと思いますが)。
それに新人の頃は、大半の人は、あまり細かくややこしく考えず、「自分の面白いと思うこと」をとにかく、たくさん、最大値で込めることに全力を注いだ方がよいと思うので、変に取捨するのも却ってよくないかとも思います。
ただ、『約ネバ』の4年で私が強く学んだのは間違いなくそれです。
どんな『ファンタジー』投稿作が読みたいですか?
面白ければどんな作品でも読みたいです!
ここが面白いでしょ素敵でしょ楽しいでしょ切ないでしょエグいでしょ、というあなたの「いいでしょ」を全力でぶつけてきてください!
応募者のみなさんへメッセージをお願いいたします。
枠に囚われず自由に世界を、作品を、創り上げてください。
無論、ゴリゴリ ドストライク ド真ん中のザ・少女漫画なファンタジーも大歓迎だと思います!
少なくとも白井は大歓迎です!
皆様の、あらゆる「いいでしょ」を楽しみにお待ちしています!
どしどしご応募ください!!